認知神経リハビリテーション学会

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メッセージNo.12  「マトゥラーナとヴァレラのオートポイエーシス」

 オートポイエーシス(autopoiesis,自己組織化,1987)はシステム論であり、生命システムを内部観察しようとする特性を有している。何かを見て、それを記述すること。例えば、患者の動作分析は外部観察である。セラピストが運動を生成する脳のシステムを分析しようと思えば、その運動分析を外部観察に留めてはならないことは明らかである。では、どのようにすれば内部観察が可能となるのか。それは問題を投げかけ、その解答を分析することである。例えば、腱反射は、一見脊髄の内部を観察しようとしているように思われているが、そこには人間の「主体性」が欠如している。生命システムは「主体性」をもっている。この主体性は「反射検査」では確認できない。主体性を観察するためには、与えられた問題に解答しようとする時の、解答の自由度が保証されていなければならない。認知運動療法では、患者に問題を提示する。しかし、その解答の仕方の自由度は患者の主体性に依存している。解答に自由度を与え、その誤りがどうして出現するかを考えてゆくことが内部観察者の視座である。

 リハビリテーションにおける運動分析にでは、外部観察と内部観察が区別されずに用いられる。セラピストは腱反射の検査と運動覚の検査の本質的な違いを考えてみる必要がある。例えば、半側空間失認の検査はどちらであろうか。あるいは閉眼した片麻痺患者の手指の親指と小指をセラピストが両手で触れて、「今触れている2つの指の間には何本の指があるか」という問題を患者に投げかけてみよう。もし間違えば、手指失認の可能性がある。これは内部観察の例である。オートポイエーシスはきわめて難解な生命現象を扱うシステム理論だが、その概念はリハビリテーションに取って有益な示唆を与える。セラピストは内部観察者でなければならない。内部観察によって、同一の疾患でも異なる病態、すなわち患者ひとりひとりが異なる脳システムの障害を有していることが発見できる。

 ただ、オートポイエーシスの考え方は単純ではない。そこには「感覚入力も運動出力もない」と仮定されている。身体と環境との相互作用は「情報」として入力されるのであって、感覚が脳に入力されるわけではないとされている。脳のシステムは「情報」を取り込むことによって作動する認知器官なのである。運動出力も情報を作り出す手段とされている。脳のシステムは情報を組織化していることに注意しなければならない。この「感覚入力‐脳(中枢)−運動出力」という神経運動学理論の強固な図式を否定したところに、オートポイエーシス理論の革新性がある。自己組織化する脳は、情報を求めているのである。そして、この情報の意味とは何かを問うところがギブソンのアフォーダンス理論と共通しているのである。

 認知運動療法を患者に適応する時にも、セラピストは常に、患者が運動制御においてどのような情報が必要であるかを内部観察によって考えてゆく必要がある。

 ペルフェッティ先生はヴァレラと会談した時のことを、写真を見せながら嬉しそうに話していた。また、「人間と機械」という自らの著書の表紙にオートポイエーシスの本の写真を使い、オマージュを捧げている。

2001.6.15

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