認知神経リハビリテーション学会

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メッセージNo.41  「認知運動療法」
−カルロ=ペルフェッティによる新しい治療概念−

 Cognitive Therapeutical Exercises:
 A New Treatment Concept by Prof. Carlo Perfetti
 (from http://.scbon- kliniken より)

 脳の可塑性に関する最新の研究によって「機能回復神経学(restorative neurology)」が発展し、中枢神経系や末梢神経系の疾患に対するリハビリテーション治療を統合する「ニューロリハビリテーション(neurological rehabilitation)」が誕生した。
 1970年代初頭に、イタリアの神経科医でリハビリテーション専門医でもあるカルロ=ペルフェッティは、脳損傷後の片麻痺に苦しんでいる患者のために、新しい治療概念を提案した。彼は、特に手の運動麻痺の回復が、当時普及していた運動療法では困難だと考えた。
 ペルフェッティは、大脳皮質レベルで組織化されている認知過程の「意味的な関係性」に着目し、認知運動療法の構築に挑戦した。それは注意、意図、記憶、知覚、動機、判断といった、目で見ることができない計測不能な心的操作を含んでいた。これは古い生気論の復活ではなく、新しいシステム論的な視点である。長い間、随意運動は魂によって呼び出されるもの、あるいは反射の連鎖だとされ、こうした意味的な関係性への視点は考慮されて来なかった。しかし、ペルフェッティは、認知過程の活性化と確実な目標に達成しうる効果的な治療システムの構築へと向かった。

 「私たち自身に必要な機能は、世界と相互作用するために存在する」

 ペルフェッティは、この治療概念を新しい方法であるとは主張しなかった。しかし、認知運動療法は考案され、臨床展開が始まった。応用された理論背景には、ルリアとアノーキンによる神経心理学の知見があり、ピアジェによる発達神経学の知見があり、カール・ポパーの科学哲学的な視点があった。
 カール・ポパーによれば、世界の未来は決して確実で決定的なものではない。それは絶え間なく変動するものであり、人間の知性によって世界の進路は捉えることができない。つまり、「すべての知識は、常に暫定的な状態」である。
 認知運動療法の核心は、「もし、新しい発見こそが科学的方法を生み出してゆくための基礎であるならば、治療もまた検証されなければならない(仮説検証)」という点にある。それゆえ、ある特定の治療は連続的に更新されて発達するという可変的なものでなければならない。検証された治療はそれまでの治療に取って代わることができ、より患者の特異的な問題に対して個別的に適用されてゆくことになる。

 認知運動療法は「中枢神経系の再組織化(reorganization)」を目的としている。患者は動作を教えられるのではなく、どのようにして生物学的な運動を遂行すべきかの「規則(ルール)」を教えられる。
 患者はさまざまな運動を発達させるために訓練を受けるが、治療の目的はそれ自体ではなく、患者の中枢神経系が再び柔軟性のある特定の認知能力を使用することによって、運動の多様性や運動を制御する能力の改善をもたらすものでなければならない。

 我々がダイナミックに調節され機能する中枢神経系を援助するために試みる認知運動療法の意味は、可能な限り良好な中枢神経系の再組織化を促すことにある。この点においては、運動と感覚間の循環的な相互作用が非常に重要となる。
 人間は筋骨格系を介して世界と接触する。世界を感じることは、環境に触れ、掴むことで得られる。同時に、中枢神経系は世界の内で筋骨格系の運動計画と運動実行ができるようになるために、身体それ自体によって「予測的な情報」を準備しなければならない。いかなる随意運動も情報の選択や抽出を患者が事前に準備するシステムの結果であり、それによって次の行為(運動シィークエンス)の可能性が作り出されてゆく。
 すべての運動は情報(information)を産出する。それは行為の創発と結びついた部分的な情報である。もし、この運動と感覚間の循環的な相互作用における神経回路が崩壊すれば、生理的な運動はもはや正確に実行できない。

 ペルフェッティは「認知運動療法」を発達させた。そして、彼の仲間たちは訓練を3つの段階に基礎づけた。すべての訓練は情報(差異)を得ることに関係している。目的のない運動は「心によって物語る」ことができない。その結果、運動イメージの想起に利用できない。
 訓練の特徴は、アイマスクで目隠しをして実行しなければならないことである。それは視覚情報の強い支配を防ぐためである。
 第一段階の訓練において患者は、情報を収集する訓練を行う。患者の手あるいは足は「運動の特異的病理」と呼ばれる1)伸張反射の異常、2)放散反応、3)原始的運動スキーマ、4)運動単位の動員異常といった異常で原始的な痙性麻痺を防ぐために、セラピストによって他動運動的に誘導される。
 第一段階の訓練には異常な伸張反射の制御であることとは別に、触覚や運動覚といった感覚の改善という目的もある。そして、それは中枢神経損傷によって生じた重篤な筋の麻痺状態を克服するための基盤となる。
 第二段階と第三段階において強調されるのは、多関節運動の制御であり、空間・時間・強度といった随意運動のパラメーターを介した運動プログラムの改変である。患者はどのように大脳皮質レベルの認知過程を活性化して病的要素を制御するのかという方法を教えられる。

 これにより、認知運動療法において、あらゆる機能回復は「中枢神経系の可塑性に準拠した、病的状態からの学習」と定義された。

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